昔、職人という働き方があった。職人たちは、どこかの会社に所属するのではなく、自分の技術を売って生活していた。大工、陶芸家、絵師など、彼らはそれぞれの腕一本で仕事をこなし、注文が来れば働き、来なければ休んだ。自由な働き方に見えるが、その生活は決して楽ではなかった。
江戸時代の話である。ある大工の男、田村新助は、腕のいい職人として知られていた。彼は複数の商人から仕事を受け、毎日忙しく働いていた。しかし、ある冬、仕事が急に減ってしまった。商人たちが不景気を理由に注文をやめたのだ。新助には蓄えがほとんどなかった。仕事がなければ、収入もない。家族を養うために、彼は米を売り、道具を質に入れるしかなかった。
春になると、また仕事が戻ってきた。新助は以前より熱心に働くようににした。しかし、また次の冬が来ると、同じことが繰り返された。彼はその年の秋、近所の職人仲間たちと話し合うことにした。「このままでは、冬になるたびに苦しむことになる」と新助は言った。仲間たちも同じ悩みを持っていた。そこで彼らは、お互いに少しずつお金を出し合って、困ったときに助け合う仕組みを作ることにした。これが、職人たちの小さな「助け合いの会」の始まりだった。
それから百年以上が経ち、時代は大きく変わった。今の時代、会社に属さずに働く人たちのことを「フリーランス」と呼ぶ。インターネットを使って仕事を受け、どこにいても働けるようになった。デザイナー、ライター、プログラマーなど、様々な分野でこのような働き方をする人が増えている。
しかし、現代のフリーランスが直面する問題は、新助の時代と似ている部分がある。仕事が突然なくなることがある。病気になっても、会社員のように休業中の給料は出ない。老後のための年金も、自分で準備しなければならない。つまり、自由な分だけ、リスクも自分で負わなければならないのだ。
新助たちが作った「助け合いの会」のように、現代でもフリーランス同士がつながって情報を共有したり、困ったときに支え合ったりする動きが出てきている。歴史を振り返ると、自由に働くことの魅力と苦労は、時代が変わっても変わらないことがわかる。そして、一人では解決できない問題も、仲間と力を合わせれば乗り越えられるという教訓は、今も生きているのだ。