インターネットが当たり前になった今、あの頃のことをよく思い出す。
2015年、私はエンジニアとして働き始めたばかりだった。チームのみんなと一緒に、地方の高齢者向けのサポートプロジェクトに参加することになった。最初は「スマホの使い方を教えるだけだから、簡単だろう」と思っていた。しかし、現場に行ってみると、私の考えは大きく変わることになった。
訪ねた家には、70代のおばあさんが一人で住んでいた。家の中にはテレビしかなく、インターネットにつながる道具は何もなかった。「スマホって何ですか?」と彼女は聞いた。その言葉を聞いたとき、私は恥ずかしくなった。私たちは毎日当たり前のようにスマホを使っているのに、同じ社会の中にそれを全く知らない人がいることに、気づいていなかったのだ。
そこからチームで話し合いを重ねた。「機械を教えるだけではだめだ。まず、なぜ必要なのかを一緒に考えなければならない」とチームリーダーが言った。私もその通りだと思った。おばあさんは病院の予約を電話でしか取れず、バスの時刻表も紙でしか確認できなかった。情報を得るのに、私たちの何倍もの時間と手間がかかっていたのだ。
私たちはやり方を変えることにした。まず、おばあさんが毎日使っていることに合わせて、スマホで何ができるかを一つひとつ見せるようにした。病院の予約、天気の確認、家族への連絡。少しずつ、彼女の顔が明るくなっていった。三か月後、おばあさんは自分で孫に写真を送れるようになっていた。
あの体験は、私にとって大切な教訓になった。技術は使える人だけのものではない。使えない人のことを考えながら作り、広めていくことが、本当の意味での「みんなのための技術」だと思うようになった。チームで取り組んだからこそ、一人では気づけなかったことに気づけた。
今、私はあの頃より少し経験を積んだエンジニアになった。新しいサービスを作るとき、私は必ず「スマホを使ったことがない人でも使えるか」と自分に問いかけるようにしている。あのおばあさんの「スマホって何ですか?」という言葉が、今でも私の心の中に残っているからだ。