三十代のころ、私は会社でなかなか成果が出せない時期が続いていた。毎日遅くまで働いても、仕事の結果は思うようにならなかった。そのころ、同じ部署の先輩である田中さんから、ある忠告を受けた。
田中さんは私に、「もっと周りの人に相談するようにしたほうがいいよ。一人で全部やろうとしすぎている」と言った。しかし私はその言葉を素直に受け入れることができなかった。「自分でできる。人に頼るのは弱いことだ」と思っていたからだ。当時の私には、他の人の助けを借りることへの強い抵抗感があった。
その後も私は一人で仕事を続けた。しかし、大切なプロジェクトで大きな失敗をしてしまった。情報の確認が足りなかったのが原因だった。もし誰かに相談していれば、その失敗は防げたかもしれない。上司に呼ばれて厳しく注意されたとき、私は初めて田中さんの言葉の意味を深く考えるようになった。
あの失敗から数年がたった今、私は四十代になった。当時を振り返ると、田中さんの忠告は正しかったと思う。あのとき私がその言葉を受け入れられなかったのは、自分のやり方を守りたかったからだろう。しかし、それは成長のチャンスを自分から逃していたことでもあった。
歴史を見ても、同じようなことがある。例えば、昔の指導者の中には、部下や周りの人からの意見を聞かずに、自分の判断だけで物事を進めた人がいた。その結果、大きな失敗につながったケースも多い。大切なアドバイスを受け入れられなかったことが、その後の流れを大きく変えてしまったのだ。
今の私は、人からの意見や助言を大切にするようにしている。もちろん、すべての意見を受け入れるわけではない。しかし、まず話をよく聞いて、自分なりに考えることが大切だと思っている。人は一人では限界がある。周りの力を借りながら成長していくことが、本当の意味での強さだと、今は感じている。
田中さんの言葉は、あの当時の私には受け入れがたいものだった。しかし、その言葉がなければ、今の私はなかったかもしれない。あの忠告は、私の人生の中で大切な転換点になったと、今では心からそう思っている。