あるNPO法人が2023年に実施した調査によると、インターネット上での誹謗中傷の経験について、世代間で大きな認識の差があることが明らかになった。10代・20代の若い世代の約68%が「ネット上での悪口や嫌がらせを直接経験したことがある」と回答した一方、60代以上では同様の経験があると答えた割合はわずか12%にとどまった。この差は、単に利用頻度の違いだけでは説明できないとされている。注目すべきは、被害の深刻さに対する認識の違いである。若い世代の約45%が「ネット上の言葉は現実の暴力と同じくらい傷つく」と考えているのに対し、60代以上では同意した割合は21%にとどまった。この調査結果は、オンライン上の言葉がどれほどの影響力を持つかについて、世代によって受け止め方が大きく異なることを示している。専門家は、若い世代にとってオンラインと現実の境界がより曖昧であるためだと分析している。こうした認識の差を埋めることが、被害防止の第一歩になると考えられている。
長年、地域の子どもたちを見守ってきた70代の田中さんは、最近の若者のネット上のやりとりを見て、こう語る。「昔から、人を傷つける言葉というのはあった。ただ、顔が見えない分、歯止めが利かなくなるのだろうと思う。わしらの時代は、相手の顔を見て話すのが当たり前だった。顔を見れば、相手が傷ついているかどうかが分かる。だから自然と言葉を選んでいた」と言う。田中さんによれば、匿名でいられることで、言葉の重さへの感覚が薄れてしまうのではないかということだ。「若い人たちが悪いわけじゃない。ただ、ツールが変わると、人の心の動き方も変わる。それを大人が一緒に考えてやらなければ、子どもたちは孤独に傷ついていくだけだ」と田中さんは続ける。世代が違っても、「相手を思いやる気持ち」は変わらないはずだと田中さんは信じている。世代間の対話を通じて、互いの経験や知恵を共有することが、ネット上での傷つけ合いを減らす一つの道になるのではないかと、田中さんは静かに語った。