子どもたちが生まれたとき、私は「この子たちが大人になる頃、世界はどうなっているだろう」と考えた。今、その問いが宇宙にまで広がっている。月や小惑星に豊富な資源が眠っていることは、もはや夢の話ではない。複数の国と民間企業が、実際に採掘を計画しているのだ。
そもそも宇宙の扱いについては、1960年代から国際的な取り決めがあった。当時結ばれた条約では、宇宙は「どの国のものでもない」とされ、平和的に利用するという原則が定められた。これは、米ソが宇宙開発を競っていた時代の産物だ。軍事的な対立を避けるため、宇宙を共有の場として守ろうとする意図があったわけだ。
ところが、その後の1979年に結ばれた月に関する条約では、月の資源は「人類全体の財産」であり、一部の国や企業が独占してはならないと定められた。聞こえはよいが、実際にはアメリカ、ロシア、中国といった宇宙開発の主要国がこの条約に加わっていない。つまり、資源の独占を禁じるルールが、最も力を持つ国々には適用されないという矛盾が生じているのだ。
さらに問題を複雑にしているのが、近年の民間企業の動きだ。アメリカでは2015年に、自国の企業が宇宙で採取した資源を所有できるという法律が作られた。これに続いて、いくつかの国も同様の国内法を整えた。国際条約が追いつかないうちに、各国が自国に有利なルールを先に作ってしまっているわけだ。
親として正直に言えば、この流れには不安を感じる。かつて海や深海底の資源をめぐっても、先進国と途上国の間で激しい対立があった。結局、力のある国が有利なかたちで話がまとまったという歴史がある。宇宙でも同じことが繰り返されるのではないか、という心配だ。
子どもたちの世代は、宇宙をもっと身近なものとして感じるに違いない。だからこそ、今のうちに公平なルールを作っておくことが大切だと思う。特定の国や企業だけが利益を得るのではなく、宇宙開発の恩恵が広く共有される仕組みが必要だ。
そのためには、現在の国際的な枠組みを見直し、主要国が参加できる新しい取り決めを作るべきだろう。技術を持つ国と、資金や人材が不足している国が対等に話し合える場が求められる。宇宙は一部の人間のものではなく、未来の子どもたちも含めた全員のものであるはずだからだ。今動かなければ、手遅れになる可能性が高い。