スマホとともに歩んだ十年間
今から十年ほど前、私が初めてスマートフォンを手に入れたのは、大学に入学した春のことだった。当時、周りの友人たちはすでにスマホを使っていて、私だけが古い携帯を持っていた。親に頼んでようやく買ってもらったとき、その小さな画面に広がる世界の大きさに、心から驚いた。
はじめのころは、地図アプリで道を調べたり、友人と写真を送り合ったりするだけで十分だと思っていた。スマホはあくまでも「便利な道具」だと考えていた。しかし、使い始めて半年ほどたつと、少しずつ様子が変わってきた。授業中も、食事中も、気がつけばスマホの画面を見ていた。友人と話しているときでさえ、手元のスマホが気になってしかたがなかった。
二年目の春、私はある出来事をきっかけに、自分の生活を見直すことにした。大切な友人と食事をしていたとき、私はずっとスマホを触っていた。友人は何も言わなかったが、帰り道に「最近、話しかけても上の空だよね」と静かに言った。その言葉が、胸に刺さった。私は友人の言葉の意味をしばらく考え続けた。スマホに集中するあまり、目の前の大切な人を傷つけていたのだと、そのとき初めて気がついた。
それから私は、スマホの使い方を変えようとした。まず、食事中はスマホをかばんの中にしまうようにした。また、夜十一時以降はスマホを触らないことにした。最初はとても難しかった。何度も失敗して、気がつけば深夜までスマホを見ていることもあった。それでも続けるうちに、少しずつ習慣が変わっていった。
三年目になると、スマホとの付き合い方がずいぶん落ち着いてきた。スマホは確かに便利だ。知りたいことをすぐ調べられるし、遠くにいる家族とも気軽に話せる。しかし、何でもスマホに頼りすぎると、自分で考える力が弱くなるような気がした。地図を見ずに道を歩いてみると、新しい店や景色を発見することができた。それは、スマホがあっては気づかなかったことだ。
今、私はスマホを「必要なときに使う道具」として考えるようにしている。十年前の自分に伝えるとしたら、「スマホは便利だけれど、目の前の人や瞬間を大切にすることを忘れないでほしい」と言いたい。スマホとの付き合い方を学んだこの十年は、私にとって、生活の中で何を大切にするかを考えるための大事な時間だったと思っている。