映像が「証拠」としての地位を失いつつある現代において、合成技術による偽造コンテンツへの対抗策として、技術的検出手法と法制度的規制という二つのアプローチが並立している。前者は、人工知能が生成した映像に残る微細な統計的痕跡——瞬きの不自然さや肌の質感に潜む周波数異常など——をアルゴリズムによって自動検出するものであり、処理速度と拡張性において優位性を持つ。実際、国際的な研究コンソーシアムの一員として取り組んだ我々の実証実験では、最新の検出モデルが既知の生成手法に対し九割超の精度を記録した。しかしながら、検出モデルの訓練に用いられたデータと異なる生成手法が登場した途端、精度は著しく低下するという本質的な脆弱性を抱えており、いわば「いたちごっこ」の構造から逃れられないでいる。一方、法制度的規制は、偽造コンテンツの流通そのものを刑事罰や民事責任の対象とすることで抑止効果を狙うが、プラットフォームの国際的分散化や匿名性の高い流通経路を前に、執行可能性の限界が早くも露呈している。両手法はいずれも単独では不十分であり、相互補完的な枠組みの構築こそが喫緊の課題と言わざるを得ない。
偽造映像問題への応答として、近年注目を集めているのが「来歴証明」に基づくアプローチである。これは、映像の撮影時点から流通に至るまでの全工程において暗号学的署名を付与し、改竄の有無を第三者が検証できる仕組みを整えるものであり、技術的検出が「疑わしきを弾く」守りの手法であるのに対し、来歴証明は「真正なるものを認める」攻めの手法と位置づけられる。国際標準化団体との共同研究を通じて我々が確認したのは、この手法が既知・未知を問わず生成手法に依存しない点において、検出モデルよりも原理的に堅牢であるという事実だ。しかし、来歴証明の普及には撮影機器からプラットフォームまでの全ステークホルダーによる規格統一が不可欠であり、既存インフラとの整合性確保や導入コストの問題が現実の障壁として立ちはだかっている。また、署名が付与されていない映像が即ち偽造であるとみなされる「無証明即偽造」の論理は、市民のプライバシー保護や表現の自由との緊張関係を生じさせる懸念も払拭できない。したがって、来歴証明は長期的な解決策の中核を担い得るものの、移行期においては検出技術や法規制と組み合わせた多層的な対策が不可欠であると、我々は結論づけている。