最近、病院の待合室でよく見る光景がある。家族で来ているのに、それぞれがスマートフォンの画面を見つめていて、ほとんど話をしないのだ。お父さんもお母さんも、子どももみんな自分の画面の中にいる。私はそれを見るたびに、少し心が痛くなる。
私が子どもだったころ、家族の時間はもっと違っていた。夕食のテーブルには、その日の出来事を話す声があった。学校でどんなことがあったか、仕事で何か困ったことはなかったか、そんなことをゆっくり話し合ったものだ。テレビはあったが、食事の時間は家族が顔を合わせて話す大切な場所だった。
ところが今はどうだろう。あるデータによれば、家族が一緒にいる時間のうち、実際に会話をしている時間は以前より大きく減っているそうだ。その代わり、家族の間でもSNSのメッセージを使って連絡を取り合うことが増えている。同じ家にいるのに、メッセージで「ご飯できたよ」と送る家族もいると聞いて、私は最初、信じられなかった。
医療の現場では、家族のコミュニケーションが患者の回復に関係しているということが知られている。家族がよく話し合い、お互いの気持ちを理解している家庭では、患者が元気になるのも早いことが多いのだ。言葉で気持ちを伝え合うことは、体の健康にもつながっているらしい。
もちろん、スマートフォンやSNSが便利なことは間違いない。遠くにいる家族とすぐに連絡が取れるし、写真や動画を共有することもできる。それは以前にはなかった、とてもありがたいことだ。
しかし、顔を見て話すことと、画面を通じて文字を送ることは、やはり同じではないと私は思う。相手の表情、声のトーン、その場の空気——そういったものは、文字だけでは伝わらないことが多い。特に、悩みや心配ごとを打ち明けるときには、顔を見て話すことがどれほど大切かを、私は仕事の中で何度も感じてきた。
家族の形は時代とともに変わっていく。それは自然なことだし、新しい道具を使うことも悪いことではない。ただ、道具を使いながらも、顔を合わせて話す時間を大切にするようにしてほしいと、私は強く思う。食事のときだけでもスマートフォンを置いて、家族の顔を見ながら話すことにする——そんな小さな習慣が、家族の絆を守ることにつながるのではないだろうか。