私が初めて地元のサッカークラブに入ったのは、この町に引っ越してきた春のことだった。知り合いも少なく、毎日なんとなく寂しい気持ちで過ごしていた。友人に誘われて、半分しかたなくグラウンドへ足を運んだのを今でも覚えている。
そこには、年齢も仕事も違う人たちが集まっていた。会社員、主婦、学生、定年退職した人まで、本当にさまざまだった。最初は話しかけるのが少し怖かったが、練習が終わると自然に会話が生まれた。「どこから来たの?」「仕事は何をしているの?」そんな何気ない言葉が、少しずつ距離を縮めてくれた。
クラブに通い始めてから三か月が過ぎたころ、私はあることに気がついた。練習の日を楽しみにしている自分がいたのだ。サッカーが上手くなりたいという気持ちもあったが、それよりも、あの場所に行けば誰かに会えるという安心感のほうが大きかったかもしれない。
町の祭りの準備や、近所の公園の清そう活動など、クラブのメンバーが一緒に動くことも多くなった。スポーツをするだけでなく、地域のさまざまな活動に参加するようになったのだ。気がつけば、以前は名前も知らなかった人たちと、気軽に話せる関係になっていた。クラブがなければ、こんな出会いはなかっただろうと思う。
あれから二年がたった今、私はクラブの世話役を少しだけ手伝うようになった。新しく入ってきた人が最初に感じる「よそ者感」を、私もよく知っているからだ。だから、新しいメンバーには自分から声をかけるようにしている。
地元のスポーツクラブは、ただ運動する場所ではないと、今の私は思っている。人と人がつながる場所であり、「ここに居てもいい」と感じられる場所だ。特別なことをしなくても、同じ時間を同じ場所で過ごすだけで、不思議と心がほぐれていく。この町に来てよかったと思えるようになったのは、間違いなくこのクラブのおかげだ。スポーツの力は、体を動かすことだけにあるのではないと、私は強く感じている。