去年の秋、私は仕事でひどいスランプに入っていた。毎日同じ作業をくり返しているのに、成果が全く出なかった。上司からの評価も下がり、自分に自信が持てなくなっていた。「このまま続けても意味がないのかもしれない」と思う日が続いた。
そんなある日、図書館で一冊の本を見つけた。それは、明治時代の実業家・渋沢栄一についての本だった。渋沢は若いころ、幕末の混乱の中で何度も計画が失敗し、思うように動けない時期があったそうだ。しかし彼は、その時期を「止まっている時間」ではなく「次のための準備の時間」だと考えていたという。失敗や停滞を、前に進むための力に変えていたのだ。
その話を読んだとき、私は少し恥ずかしくなった。私は今の状況から早く抜け出すことしか考えていなかった。でも渋沢は、うまくいかない時期の中にこそ、大切な何かがあると気づいていたのだと思う。
それから私は、仕事のやり方を少しずつ変えることにした。結果だけを気にするのをやめて、毎日の小さな作業を丁寧にするようにした。また、以前は一人で全部やろうとしていたが、同じチームの先輩に積極的に相談するようにした。すると、思っていたよりも早く仕事が進むようになった。
数週間後、上司から「最近、仕事の質が上がったね」と言われた。その言葉を聞いたとき、胸の中に温かいものが広がった。スランプの間、私は何もできていないと思っていた。でも実は、その時期に自分の弱いところに気づき、変わるためのきっかけをもらっていたのだと分かった。
渋沢栄一が生きた時代と今の時代は全く違う。でも、うまくいかない時期をどう乗り越えるかという問いは、いつの時代も同じだと思う。歴史の中の人物が教えてくれたのは、「止まること」を恐れるのではなく、「止まっている間に何を考え、何を変えるか」が大切だということだ。
今の私にとって、あのスランプは大切な経験だったと思っている。うまくいかない時期は、自分を見直すための時間だったのだ。これからも壁にぶつかることはあるだろう。でも、そのたびに立ち止まって、自分のやり方を見直すようにしたい。それが、あの時期から学んだ一番大切なことだ。