N1· 中文 · 約 650字
本文
今になって振り返れば、あの夜の判断が自分のジャーナリストとしての原点を決定づけたのだと思わずにはいられない。
十数年前、私は地方紙の記者として、ある地元企業による不正融資の疑惑を追っていた。内部告発者から入手した資料は、経営幹部と地方行政との癒着を示唆するに足る内容であり、掲載すれば間違いなく公益に資するものだと確信していた。ところが、入稿直前になって編集長から呼び出され、「記事の掲載は見合わせるように」との指示が下った。理由は曖昧なままで、ただ「上からの意向だ」という一言で片付けられた。当時の私は憤りを抑えきれず、その決定に真っ向から異議を唱えたものの、結局は組織の論理に屈せざるを得なかった。
あの頃は、ひたすら上層部の保身と既得権益への迎合だと断じていた。しかし今、同じ立場で後輩を指導するようになった私は、事態の複雑さをいやが上にも痛感させられる。取材対象との関係維持、訴訟リスク、そして不確かな情報を公にすることで生じ得る当事者への取り返しのつかない損害——これらは決して軽視できる問題ではない。
翻って言えば、自主的な抑制がそのまま健全な慎重さを意味するとは限らないだろう。萎縮が常態化した報道環境では、権力の恣意的な行使を問い直す声そのものが失われかねない。真に公益に奉仕する報道とは、外圧に屈して沈黙を守ることでも、無批判に情報を垂れ流すことでもなく、開示と抑制の間で絶えず自問し続ける営みであると、今の私は考えるようになっている。
問題 2
Q1.
筆者が入稿直前に記事の掲載を見合わせるよう指示された際、当時どのような心境であったか。
①組織の決定に強く反発したが、最終的には従わざるを得なかった。
②取材対象への配慮から、自ら掲載を取り下げることが妥当だと判断した。
③上層部の意向を尊重しつつも、別の媒体への掲載を模索した。
④編集長の判断には一定の合理性があると受け止め、素直に従った。
Q2.
この手記全体を通じて、筆者が最も伝えようとしていることは何か。
①報道機関は訴訟リスクを最優先に考慮すべきであり、不確かな情報の公開は慎むべきだ。
②自主規制は一概に否定されるべきではないが、萎縮が常態化することの危険性も認識した上で、絶えず自問し続けることが報道の本質だ。
③権力との癒着を暴く内部告発報道こそが公益に最も資するものであり、いかなる圧力にも屈してはならない。
④記者クラブ制度に代表される取材慣行が報道の中立性を損なっており、その廃止こそが急務だ。
AI 보조로 작성하고 JLPT 레벨·문제 형식을 검수해 공개한 학습용 독해 지문입니다. · 2026년 5월 22일 공개 · 제작 방식 →