長年、日本の会社では「みんな同じ」が当たり前だった。同じ大学を出て、同じ価値観を持ち、同じ方向を向く。それが安定した組織を作ると信じられてきたわけだ。確かに、意思決定は速い。話し合いの時間も短くて済む。しかし、その「速さ」には大きな落とし穴がある。似たような考え方の人間が集まると、誰も反対意見を言わなくなる。その結果、間違った判断がそのまま通ってしまうことが少なくない。
私が勤める会社でも、数年前に外国人社員を積極的に採用し始めた。最初は正直、面倒だと感じた。会議での発言の仕方も違うし、仕事の進め方も異なる。しかし半年も経つと、見方が変わってきた。外国人社員は、日本人が「当然だ」と思い込んでいた慣習に疑問を投げかけてくれる。そのおかげで、長年続けてきた非効率な手順が見直されたのだ。
もちろん、多様な人材を組織に迎えるだけでは十分ではない。それぞれの意見が正当に評価される環境がなければ、多様性はただの「飾り」に終わる。異なる背景を持つ人が自由に発言できてこそ、組織全体の判断力は高まるのだ。同質的な組織の「楽さ」に慣れた私自身、それを実感するまでに時間がかかった。しかし今では、多様な視点こそが組織の強みだと確信している。
多様な人材を活かすことが大切だという意見は、今や企業の間で広く聞かれる。しかし、実際に職場でそれを実現しようとすると、さまざまな困難にぶつかる。価値観の違いから誤解が生じたり、コミュニケーションに余分な時間がかかったりすることもある。「多様性はコストだ」と感じる管理職の声も、正直なところよく耳にする。
だが、その見方は少し短絡的ではないだろうか。確かに、異なる背景を持つ人々が一緒に働く初期段階では、摩擦が生じやすい。それは否定できない事実だ。しかし、その摩擦こそが新しいアイデアを生み出す源になりうる。同じ考え方の人間だけが集まる組織では、既存の方法を疑う機会が生まれにくい。一方、異なる視点を持つ人材が議論を重ねることで、これまで気づかなかった問題点や改善策が浮かび上がってくるわけだ。
重要なのは、多様性を「管理すべき問題」としてではなく、「活用すべき資源」として捉え直すことだ。そのためには、異なる意見を受け入れる組織の文化と、公平な評価の仕組みが必要になる。手間はかかるが、その投資は長期的に見れば必ず組織の力になると私は考えている。多様性の恩恵は、短期的な効率だけで測れるものではないのだ。