仮想空間利用に関する指針
第一条(目的)
本指針は、仮想空間における利用者の健全な交流を守り、現実生活との調和を保つことを目的とする。近年、仮想空間を通じた交流が若い世代を中心に広まりつつある。そうした状況をふまえ、本指針は利用者が安心して活動できる環境を整えるために定められた。
第二条(適用範囲)
本指針は、本サービスが提供するすべての仮想空間において適用される。利用者が自分の分身となる人物像を作成し、他の利用者と交流する行為はすべて本指針の対象となる。なお、本サービス外の外部サービスとの連携機能を利用する場合も、本指針の範囲内にあるものとみなす。
第三条(自己表現の自由と制限)
利用者は、仮想空間内で自由に自己表現を行う権利を持つ。ただし、他者を傷つける表現や、現実の人物を誤解させるような人物像の使用は禁止する。また、現実の社会的立場と大きく異なる人物像を用いて他者を意図的に欺く行為も、同様に禁止とする。
第四条(例外事項)
教育・研究を目的とした活動においては、運営者の事前承認を得た場合に限り、一部の制限を緩和することができる。この場合、活動の目的と内容を明確に申請し、承認を得た後に活動を開始すること。
利用者各位へのお知らせ
平素より本サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。このたび、仮想空間内での交流に関する新たな規定を設けることになりましたので、ご案内申し上げます。
私は長年、人と人とのつながりを研究してきた者として、仮想空間が人間関係に与える影響を深く憂慮してまいりました。現実の場での対話とは異なり、仮想空間では相手の表情や声の調子が伝わりにくいことがあります。そのため、意図せず相手を傷つける言葉を発してしまう危険があるわけです。
今回の規定改定では、特に以下の点に注意をお願いいたします。まず、仮想空間内での交流時間について、一日あたりの利用時間の目安を設けました。長時間の利用は現実生活への影響を及ぼすおそれがあるため、適切な休憩を取ることを強く推奨します。次に、他の利用者との関係において、現実の人間関係と同様の敬意を持って接することを求めます。仮想空間であっても、相手は現実に存在する人間であることを忘れないでください。
違反が確認された場合は、警告の後、利用の一時停止または永久停止の措置を取ることがあります。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
仮想空間利用に関する体験記
私が初めて仮想空間というものに触れたのは、今から三年ほど前のことである。七十代の私にとって、それは全く未知の世界であった。研究室の若い学生に勧められ、おそるおそる試してみたのが始まりだった。
最初は操作の難しさに戸惑い、自分の分身となる人物像をどう設定すればよいかも分からなかった。しかし、慣れてくるにつれて、そこに広がる世界の豊かさに驚かされた。現実では会えない遠方の研究者と気軽に話せるばかりか、若い世代の考え方を直接聞く機会も得られた。
一方で、次第に気になることも出てきた。仮想空間での交流が増えるほど、現実での会話が減っていく感覚があったのだ。画面の向こうの相手との関係は確かに深まっていたが、隣の研究室の同僚との会話は以前より少なくなっていた。これは私だけの変化ではなく、学生たちにも同じ傾向が見られた。
今となって思えば、仮想空間は現実の関係を補うものであって、置き換えるものではないという教訓を、私はこの体験から得た。どちらの場においても、相手を一人の人間として大切にする姿勢こそが、真の交流を生む基盤になるに違いない。この考えは、私が長年研究してきた人間関係の本質と、少しも変わらないものだと確信している。