N1· 中文 · 約 650字
本文
あの日のことは、今でも瞼の裏に焼き付いて離れない。
七十年以上をこの土地で生きてきた私が、孫たちに伝えておかねばならぬことがある。昭和の大水害が、この村を丸ごと飲み込んだあの夜のことだ。濁流が堤防を越えた瞬間、村人たちは着の身着のままで高台へと逃げ延びたものの、振り返れば田畑も家屋も、先祖代々が守り続けてきた全てが泥の底に沈んでいた。
それでも人々は、ここを離れようとはしなかった。なぜか。山々の懐に抱かれ、川の恵みで育てられてきたこの土地への愛着が、恐怖を凌駕していたからだ。自然とは、人間に豊穣をもたらす一方で、容赦なく命を奪いかねない存在でもある。その二律背反を知り尽くしながらも、人はなぜか大地に根を張り続ける。これは愚かさではなく、深い畏敬の念に裏打ちされた覚悟ではないかと、今の私は思う。
ところが近ごろの若い人々は、自然をもっぱら「克服すべき障害」として捉えているように見えてならない。堅牢な堤防を築き、ハザードマップを整備しさえすれば安全だと信じ込み、自然の猛威に対して人智が及ばぬ局面があるという根本的な事実から目を背けているのではないか。科学技術の進歩は誠に頼もしいが、それへの過信が、かえって人々の危機察知能力を鈍らせてはいないだろうか。
復興とは、単に元の状態に戻すことではない。被災の経験を次世代へと語り継ぎ、自然との関係を問い直す機会として昇華させてこそ、真の意味での再生といえるのだ。お前たちにも、この土地の記憶を身体で感じ取り、自然と向き合う覚悟を持ってほしいと、老いた私は切に願っている。
問題 1
Q1.
この文章で語り手が最も強く批判していることは何か。
①復興事業が遅々として進まず、被災者への支援が十分になされていないこと
②昭和の大水害の教訓が記録として残されず、後世に正確に伝えられていないこと
③若い世代が科学技術を過信するあまり、自然の本質的な脅威に対する感受性を失いつつあること
④村人たちが被災後も土地に留まり続けたことで、同じ災害の危険に繰り返しさらされてきたこと
AI 보조로 작성하고 JLPT 레벨·문제 형식을 검수해 공개한 학습용 독해 지문입니다. · 2026년 9월 10일 공개 · 제작 방식 →