コロナ禍をきっかけに、日本の学校教育においてオンライン授業が急速に広まった。文部科学省の調査によると、2020年度に遠隔授業を実施した公立小中学校の割合は、前年度の約3倍に達したという。しかし、その普及の陰で、新たな課題が浮かび上がってきた。
調査報告書によれば、オンライン授業の最大の利点は、時間や場所に縛られずに学べる柔軟性にある。特に、体調不良や遠距離通学などの理由で学校に通いにくい生徒にとって、自宅で授業を受けられることは大きな助けになった。また、授業の録画を後から見直せるため、理解が不十分な部分を繰り返し確認できるという声も多かった。
その一方で、深刻な問題も明らかになった。民間の調査機関が2022年に実施したアンケートでは、回答した中学生の約40パーセントが「オンライン授業中に集中できなかった」と答えた。自宅という環境では、ゲームや動画など気が散る要因が多く、自分で学習の時間を管理する能力が求められるわけだが、そうした習慣が身についていない生徒には大きな負担となった。
さらに注目すべきは、地域による格差の問題である。都市部では高速の通信環境が整っている家庭が多いが、地方では安定したインターネット接続が難しい地域も少なくない。同アンケートでは、通信環境に不満を感じた生徒の割合は、都市部で12パーセントだったのに対し、山間部や離島では35パーセントに上った。この差は、学習機会の不平等に直結するおそれがあると指摘されている。
加えて、オンライン授業が長期化するにつれ、生徒の孤立感が増すという傾向も報告された。クラスメートと顔を合わせる機会が減ることで、学校への帰属意識が薄れ、不登校につながるケースも見られた。ある教育相談員は「画面越しでは、生徒の細かな変化に気づきにくい」と語っており、教師側のきめ細かな対応にも限界があることがわかる。
これらのデータを総合すると、オンライン教育は確かに利便性をもたらしたものの、その恩恵を十分に受けられるかどうかは、家庭の通信環境や生徒個人の学習管理能力に大きく左右されるといえる。つまり、もともと恵まれた環境にある生徒はさらに有利になり、そうでない生徒は取り残されやすいという構造が生じているわけだ。教育の機会を平等に保つためには、通信環境の整備と、自律的な学習を支える指導体制の両方が不可欠だと、多くの専門家は主張している。