代替タンパク質食品の普及促進に関する指針(案内文)
近年、細胞培養技術および植物由来原料の精製技術の飛躍的な向上により、従来の畜産物に匹敵する栄養組成と食味を有する代替タンパク質食品が市場に相次いで登場している。こうした食品群は、温室効果ガスの排出抑制・土地利用の効率化・水資源の保全という三つの観点から、現行の食料供給体制が内包する環境的脆弱性を補完し得るものとして、国際的な学術機関および保健機関から高い評価を受けるに至っている。
多くの消費者は、代替タンパク質食品を単なる「動物性食品の劣化版代替物」と見なしがちである。しかしながら、栄養疫学的見地からは、大豆・えんどう豆・菌類を原料とした高度精製タンパク質は、必須アミノ酸の充足率において従来の食肉に遜色なく、かつ飽和脂肪酸の含有量が有意に低いことが複数の無作為化比較試験により実証されている。この事実は、生活習慣病の一次予防を使命とする医療従事者にとって、見過ごすことのできない臨床的含意を有している。
本指針は、医療機関における栄養指導の現場において、代替タンパク質食品を適切に位置づけ、患者への情報提供を標準化することを目的として策定されたものである。適用範囲は、外来栄養相談・入院時食事療法計画・地域保健指導のすべてに及ぶものとし、担当医・管理栄養士・看護師が連携して活用することを想定している。
代替タンパク質食品の臨床活用に係る通知文
当院栄養管理委員会は、最新のエビデンスに基づき、下記のとおり代替タンパク質食品の取り扱いに関する内部規程を改定したので、関係各位に周知徹底を求める次第である。
第一に、糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(ただし末期腎不全を除く)の患者に対し、担当医の判断のもと、動物性タンパク質の一部を植物由来代替品に置換する食事療法を推奨することができる。ただし、フェニルケトン尿症その他のアミノ酸代謝異常を有する患者については、本規程の適用外とし、個別の代謝専門医による管理を要するものとする。
第二に、代替タンパク質食品の摂取推奨量は、当該患者の腎機能指標・血清アルブミン値・体重あたりの推定必要タンパク質量を総合的に勘案した上で算定されなければならず、一律の基準値を機械的に適用することは厳に慎むべきである。
第三に、伝統的な和食文化を背景に持つ高齢患者の中には、豆腐・納豆等の大豆食品に対する親和性が高い一方で、精製度の高い工業的代替肉製品に対して心理的抵抗感を示す事例が報告されている。かかる場合には、患者の自律性を最大限尊重しつつ、段階的な食習慣の移行を支援することが望ましい。本通知の内容について疑義が生じた際は、栄養管理委員会まで照会されたい。
代替タンパク質食事療法適用申請書
本申請書は、担当医が患者に対して代替タンパク質を主軸とした食事療法の導入を希望する場合に、栄養管理委員会の審査を経て正式に承認を得るために使用するものである。申請にあたっては、以下の要件をすべて充足していることを確認の上、所定の書式に従い記載すること。
【申請要件】
一、患者本人または法定代理人による書面での同意が取得済みであること。
二、直近三か月以内の血液生化学検査(総タンパク・アルブミン・BUN・クレアチニン・eGFR・HbA1c・LDLコレステロール)の結果を添付すること。
三、既存の薬物療法との相互作用について、担当薬剤師が確認した旨の署名が得られていること。
四、申請者(担当医)は、代替タンパク質食品の臨床活用に関する院内研修を修了した者に限る。なお、研修未修了者が申請を行う場合は、修了済みの上級医の連署を要する。
【審査基準】
委員会は、申請内容が最新の栄養学的エビデンスおよび倫理的観点——とりわけ患者の食文化的自律性の尊重と動物性食品産業への社会的配慮——と整合的であるかを審査する。申請の承認・却下は受理後二週間以内に申請者に書面で通知される。承認された食事療法計画は三か月ごとに再評価を受けることを義務付けられ、患者の状態変化に応じて随時修正されなければならない。