私がスポーツを始めたのは、もう六十年以上も前のことです。あのころ、女性がスポーツをするのは珍しいことでした。「女の子は走り回るものではない」と言われた時代でした。それでも私は走ることが好きで、毎朝こっそり近所の公園を走っていました。
あれは私が十五歳のときでした。学校の体育の授業で、男子だけが長距離走に参加できると先生に言われました。女子はただ見ているだけでよいと言うのです。私はとても悔しくて、「どうして女子は走れないのですか」と先生に聞きました。先生は「昔からそういうものだ」と答えるだけでした。その言葉が、ずっと心に残っています。
時代は少しずつ変わっていきました。私が二十代のころ、テレビで外国の女性選手が力強く走る姿を見ました。その姿はとても美しく、私は胸が熱くなりました。「女性もこんなに速く走れるのだ」と思って、涙が出たのを今でも覚えています。その選手たちは、私たちの代わりに戦ってくれていたのだと思います。
私が三十代になると、日本でも少しずつ女性がスポーツに参加できるようになってきました。女子マラソンの大会が開かれるようになり、女性アスリートがテレビに出る機会も増えました。私も地域のマラソン大会に初めて参加することができました。走り終わった後、涙が止まりませんでした。あのころの悔しさと、やっと走れたという喜びが一緒に出てきたのだと思います。
今、孫たちを見ると、男の子も女の子も一緒に同じスポーツをしています。孫娘はサッカーが大好きで、毎週末練習に行っています。私が若いころには考えられなかったことです。孫娘の姿を見るたびに、「よかった」と思います。
ただ、今の時代もまだ課題があります。女性の試合はテレビで放送される時間が少ないと聞きます。また、男性と女性の賞金が違う大会も残っているそうです。私のような年寄りが言うのもおかしいかもしれませんが、スポーツは体を動かす喜びを、すべての人が同じように感じられる場所であるべきだと思います。
六十年以上前に公園でこっそり走っていたあの朝のことを、今でも思い出します。あのころの私に「大丈夫、時代は必ず変わる」と伝えてあげたいです。そして、今の若い人たちには、変わってきた時代をもっとよくしていってほしいと願っています。一歩一歩、前に進んでいくことが大切なのだと、七十年の人生が教えてくれました。